2025.11.02

ESSEL HOYA

今ではヴィンテージとして静かに息づく「ESSEL HOYA(エッセル・ホヤ)」。
その名前の背景には、フランスと日本、二つの国が手を取り合った時代の記憶があります。

フランスのESSEL社、日本のHOYA社

19世紀半ば、パリで誕生した光学メーカー ESSEL(エッセル)社
世界初の遠近両用累進多焦点レンズ「バリラックス」を開発した、光学の歴史を動かす存在でした。

一方、1941年に東京で創業した HOYA(ホヤ) は、精密な光学技術で知られる日本のメーカー。
1960年代、両社は技術提携を結び、「ESSEL HOYA」という名のもとにメガネやサングラスを共同で展開しました。

フランスの洗練と日本の緻密さ。
異なる文化が交わったその製品たちは、どこか静かな気品を漂わせています。
「ESSEL HOYA FRANCE」と刻まれたフレームには、そんな時代の呼吸が宿っています。

1972年、ESSEL社はシロール社と合併し、現在のエシロール(Essilor)へ。
それとともに「ESSEL HOYA」の名は歴史の中へと姿を消しました。
けれども、当時つくられたフレームは今なお美しく、ヴィンテージ市場で静かな人気を保っています。

・ナイロールの発明

ESSEL社が遺した革新のひとつに、ナイロール(Nylor)があります。
1950年代、レンズの上下どちらかをフレームで固定し、残りを細いナイロン糸で支えるという画期的な構造。
軽やかで、顔まわりの印象をすっきりと見せるデザインは、当時の常識を大きく変えました。

ナイロールという言葉は、ナイロン(Nylon)とフランス語で金を意味する「or」を組み合わせた造語。
その名のとおり、透明な糸の中にどこか貴金属のような上質さを感じさせます。

この構造は世界中に広まり、今では「ハーフリム型」として一般的になりました。
けれども、その始まりが一つのフランスの工房にあったことを、知る人は多くありません。

引用元 https://www.kamemannen.com/

「ESSEL HOYA」のフレームには、時代の境界を超えた美しさがあります。
金属の質感、セルの艶、丁寧に磨かれたライン。
実用のために生まれた道具でありながら、そこには確かな美意識が息づいています。

フランスと日本。
二つの国の技術と美学が出会い、短い時間の中で生まれたブランド「ESSEL HOYA」。
その物語は、静かに時を超え、今もヴィンテージのフレームの中で息づいています。

お読みいただきありがとうございました。

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